「時系列ランダム性分析」の使い方
時系列データの動きに「意味」や「因果関係」を見出してよいかを確かめる、時系列ランダム性分析(β版)の操作手順と結果の見方について
想定読者
PARAs AIの時系列ランダム性分析を実際に使って、結果の読み方を把握したい方
注意点
この機能は意味や因果関係の有無、施策・政策の効果の有無や大小を証明するものではありません。さらに分析を進める必要があるかどうかに気づくための参考情報です。
目次
「時系列ランダム性分析」の使い方
時系列ランダム性分析(β版)は、時系列データの動きに「意味」や「因果関係」を見出してよいかどうかを、確かめるための機能です。数理的背景に関しては、PARAs AIの「時系列ランダム性分析」の機能についてをご覧ください。
「Yが増加したのは、Xという政策が実施されたためである」と説明するときは、Yの時系列データの動きを根拠にします。しかし、そのデータの動きが、偶然の変動と見分けがつかないものであれば、その動きから意味や因果関係を読み取る必然性はありません。この機能は、その点を確かめる出発点を提供します。
ご注意 この機能の結果は、意味や因果関係の有無、施策・政策の効果の有無や大小を、証明するものではありません。さらに分析を進める必要があるかどうかに気づくための、参考情報です。
この機能でできること
選んだ1つの時系列データについて、次のことができます。
- 変化率(前期比または差分)の動きを、4つの指標で調べます。
- 4つの指標を、決まった長さの区間(ウィンドウ)をずらしながら計算し、グラフにします。
- 指標ごとに、「何も起きていない場合」の範囲(グラフの破線)と比べます。
- 季節性と、トレンド(モメンタム)の動きを確認します。
- 施策・政策の実施期間(介入期間)を指定して、その期間のデータの特徴を確認します。
4つの指標が調べる内容は、次のとおりです。
| 指標 | 調べる内容 |
|---|---|
| 修正R/S統計量 | 変化率に、長い期間にわたる依存(長期記憶)がないか |
| DFA | 変化率の並び順に、依存がないか |
| 分散比検定 | 変化率が、互いに無相関か |
| BDS検定 | 変化率が、互いに独立で、同じ分布に従うか |
この機能でできないこと
- 意味や因果関係があるかどうかの判定。
- 施策・政策の効果の有無、大小、成否の判定。
- 4つの指標の結果を、1つの評価にまとめること。
- 水準(指数値そのもの)の分析。分析するのは、変化率です。
- 四半期・年次のデータの分析。月次・週次・日次のデータが対象です。
利用の条件
- ログインしている方がご利用いただけます。
- β版の機能です。
- ポイントは必要ありません。
- 分析結果は画面にだけ表示され、サーバーには保存されません。
使い方
1. ページを開く
ヘッダーのメニュー「バイアス分析」から「時系列ランダム性分析」を選びます。
分析するデータは、次の2通りから選べます。ページ上部のタブで切り替えます。
| 政府統計 | CSVファイル | |
|---|---|---|
| 分析できるデータ | 当サービスに登録されている、日本の政府統計等の月次指標 | お手元のCSVファイルの列(月次・週次・日次) |
| データの扱い | 当サービスが政府統計から取得します | ブラウザの中だけで処理します。サーバーには送信されません |
タブを切り替えると、入力した設定は引き継がれません。
2. データを選ぶ
政府統計の場合
「指標」のプルダウンから、分析したい指標を選びます。指標を選ぶと、下に説明文が表示されます。
CSVファイルの場合
- 「データ(CSVファイル)」で、CSVファイルを選びます。
- 必要に応じて、「データの頻度」と「欠けた点の扱い」を設定します。
- 読み込みが終わったら、「分析する列(指標)」を選びます。
CSVファイルの作り方は、後述の「CSVファイルの準備」をご覧ください。
3. 期間を指定する(任意)
| 項目 | 説明 |
|---|---|
| データ範囲の開始日/終了日 | 分析する期間を絞り込みます。両端を含みます。開始日のみ、終了日のみでも指定できます。未指定の場合は、全期間が対象です。 |
| 介入の開始日/終了日 | 効果を確かめたい施策・政策の、実施期間を指定します。開始日のみ、終了日のみでも指定できます。 |
介入期間を指定すると、結果の表示が変わります。
- 「分析結果の概要」が、介入期間に終わるウィンドウの結果になります。
- すべてのグラフに、介入期間を示す青い線または帯が表示されます。
4. 設定を確認する
通常は、既定値のままで分析できます。変更したい場合は、次の表を参考にしてください。
| 項目 | 説明 | 既定値(月次) |
|---|---|---|
| ウィンドウ幅 | 1つのウィンドウに含める観測点の数。4つの指標で共通です。 | 60(5年分)。最小は40 |
| ステップ幅 | ウィンドウをずらす幅。 | 1 |
| 分散比の集計期間 q | 分散比検定で、合計する期間の数。ウィンドウ幅の4分の1以下にします。 | 4 |
| BDSの埋め込み次元 m | BDS検定で、並べる変化率の個数。 | 2 |
| BDSの距離 ε | BDS検定で、「近い」とみなす距離。標準偏差の何倍か。 | 1 |
| モメンタム期間 | 何期間前からの変化を見るか。 | 12 |
| 季節周期 | 季節成分の周期。月次なら12です。 | 12 |
| 季節成分を除く | 分析の前に、季節成分を除きます。 | 入 |
| トレンド(モメンタム)成分を除く | 各ウィンドウの内側で、直線のトレンドを引いてから計算します。 | 入 |
CSVファイルの場合の追加の項目
| 項目 | 説明 |
|---|---|
| 変化率の種類 | 「前期比(変化率)」「差分」「変換しない」から選びます。前期比は、水準がすべて正の値のときに使えます。金利や失業率のように、0以下になりうる値や、率の値には「差分」を選びます。すでに変化率にしたデータは「変換しない」を選びます。 |
| 季節調整済みのデータである | チェックすると、季節成分は除きません。 |
| ステップ幅 | 空欄または auto にすると、計算時間が長くなりすぎないように、自動で設定されます。 |
政府統計の指標では、変化率の種類は、指標ごとに決まっています。
入力値が範囲外の場合は、「実行」ボタンの横に理由が表示され、実行できません。
5. 実行する
「実行」を押します。実行中は、現在の段階が表示されます。
- 初回は、データの取得に時間がかかることがあります。
- ウィンドウの数が多いと、計算に時間がかかります。CSVファイルの場合は、設定欄の下に、計算時間の目安が表示されます。時間がかかりすぎる設定では、実行できません。その場合は、ステップ幅を大きくするか、ウィンドウ幅を小さくするか、データ範囲を絞ってください。
- CSVファイルの場合は、実行中に「中止」ボタンで止められます。
6. 結果を見る
結果の見方は、次の章をご覧ください。
結果の見方
分析結果の概要
4つの指標について、1行ずつ表示されます。
| 列 | 内容 |
|---|---|
| 直近/効果検証期間における値 | 介入期間を指定していないときは、直近のウィンドウの値。指定したときは、介入期間に終わるウィンドウの値の平均。 |
| 全期間の平均 | すべてのウィンドウの値の平均。 |
| 範囲を上に超えた期間 | すべてのウィンドウのうち、値が破線の範囲の上にあった割合。 |
| 範囲を下に超えた期間 | 同じく、範囲の下にあった割合。 |
| 意味や因果関係を見出す必然性について | 指標ごとの結論。次の節をご覧ください。 |
指標名をクリックすると、その指標のグラフに移動します。
結論の読み方
結論は、指標ごとに、次の二択のどちらかで表示されます。
| 表示 | 意味 |
|---|---|
| 意味や因果関係を見出す必然性はありません | 多くのウィンドウで、値が破線の範囲の内側にありました。そのデータの動きは、何も起きていない場合でも起こる範囲に収まっています。 |
| 意味や因果関係を見出す必然性が無いとは言い切れません | 破線の範囲の外側に出たウィンドウが、過半数を占めました。何も起きていない場合には起こりにくい動きです。 |
介入期間を指定した場合は、介入期間に終わるウィンドウが対象になります。すべてが範囲の内側であれば「必然性はありません」、1つでも外側があれば「無いとは言い切れません」と表示されます。
どちらの結論も、次のことを意味しません。
- 「必然性はありません」は、意味や因果関係が存在しないことの証明ではありません。
- 「無いとは言い切れません」は、意味や因果関係が存在することの証明ではありません。範囲の外に出た原因(自己相関、ボラティリティの変動、季節性、統計の作成方法など)は、別途、統計的に確かめる必要があります。
グラフ
結果には、次の8つのグラフが表示されます。マウスを重ねると、その時点の値が表示されます。
| グラフ | 内容 |
|---|---|
| (1) 元データ(水準) | 分析前の水準の推移。 |
| (2) 変化率 | 4つの指標の分析対象。 |
| (3) 修正R/S統計量 | 実線は各ウィンドウの値、破線は基準の範囲。 |
| (4) DFA | 同上。 |
| (5) 分散比検定 | 同上。破線は、0、+1.96、−1.96 の3本です。 |
| (6) BDS検定 | 同上。 |
| (7) モメンタム成分 | 変化率の自己相関(1期前との相関)と、モメンタム。 |
| (8) 季節成分 | 季節成分。季節性の強さも表示されます。 |
(3)〜(6)の各グラフの下には、その指標が表すもの、破線の意味、範囲の外に出たときの読み方が書かれています。破線が表す「何も起きていない場合」は、指標ごとに異なります。
| 指標 | 破線が表す場合 |
|---|---|
| 修正R/S統計量 | 変化率に長期記憶がない場合 |
| DFA | 変化率が独立で、正規分布に従う場合 |
| 分散比検定 | 変化率が無相関である場合 |
| BDS検定 | 変化率が互いに独立で、同じ分布に従う場合 |
読み方の注意
- 破線の範囲の内側にあることは、意味がないことの証明ではありません。外側に出たことも、意味のある構造や因果関係があることを意味しません。
- 4つの指標の結果は、1つにまとめて数えないでください。調べている内容が、指標ごとに違います。
- 隣り合うウィンドウは、観測点の大部分を共有しています。そのため、グラフの隣り合う点は、互いに独立ではありません。範囲の外に出た点の数を、独立した検定の回数として数えないでください。破線の範囲は、何も起きていない場合でも、値の95%が入る範囲です。そのため、何も起きていなくても、全体の5%ほどの期間は、範囲の外に出ます。外に出た期間が、1点だけでなく、連続して何点も続くかを見てください。
- 結果は、ウィンドウ幅、ステップ幅、前処理、データ範囲、選んだ指標によって変わります。設定は、結果に合わせて恣意的に選ばないでください。
- 介入期間を指定した結果は、施策・政策の効果を示すものではありません。結果を他の方に示すときは、これらの性質をあわせてご説明ください。
- 季節成分は、月次・週次では、欠けのないデータでないと除けません。除けなかった場合は、画面に警告が表示されます。季節変動が結果に影響している可能性があります。
CSVファイルの準備
| 項目 | 条件 |
|---|---|
| 形式 | UTF-8、コンマ区切り。Excelでは「CSV UTF-8(コンマ区切り)」で保存してください。 |
| 1列目 | 日付 |
| 2列目以降 | 指標の値(1行目は指標名)。水準の値を入れてください。 |
| 日付の書き方 | 2020-03-15、2020/03/15、2020-03、20200315、202003、2020年3月15日 など。年だけ、年度、四半期は使えません。 |
| 並び順 | 日付は昇順にしてください。同じ日・週・月に、複数の行を入れないでください。 |
| 値 | 数値。空欄は欠損として扱います。 |
ファイルサイズなどの上限は、CSVを選ぶ画面に表示されます。
- 日付は、月次なら月初、週次なら月曜に揃えて扱います。
- 文字列の列、有効な値が少ない列、すべて同じ値の列は、分析できません。選択肢には出ないか、理由が表示されます。
- 形式に問題があるときは、「CSVを読み込めません」と表示され、行番号と列名つきで理由が示されます。
- CSVの中身は、ブラウザの中だけで処理されます。サーバーには送信されず、保存もされません。ページを閉じる、または再読み込みすると、読み込んだデータは消えます。
データの頻度
| 選択肢 | 内容 |
|---|---|
| 自動判定(既定) | 日付の間隔から判定します。 |
| 月次/週次/日次 | 自動判定できないとき(間隔が不規則など)に、指定します。 |
欠けた点の扱い
| 選択肢 | 内容 |
|---|---|
| 警告のみ(補間しない)(既定) | 欠けた点はそのままにします。月次・週次で欠けがあると、季節成分は除けません。 |
| 線形補間で埋める | 欠けた月・週を足し、前後の値から補間して埋めます。 |
| 欠損の点を除く | 空欄の点を、その列から除きます。 |
頻度ごとのウィンドウ幅の既定値
| 頻度 | ウィンドウ幅 | モメンタム期間 | 季節周期 |
|---|---|---|---|
| 月次 | 60 | 12 | 12 |
| 週次 | 260 | 52 | 52 |
| 日次(営業日のみ) | 250 | 250 | 250 |
| 日次(毎日) | 365 | 365 | 365 |
設定を共有する
設定は、ページのURLに反映されます。URLをコピーして共有すると、同じ設定を相手の画面で再現できます。
- 政府統計: 共有されたURLを開くと、設定が復元され、自動で一度だけ実行されます。
- CSVファイル: 設定だけが復元されます。自動では実行されません。CSVの中身はURLに含まれないため、同じCSVファイルを選び直す必要があります。
結果そのものはURLに含まれません。実行のたびに、その時点のデータで計算されます。
よくある質問
Q. 政府統計のデータが最新になっていません。 政府統計のデータは、サーバーに一時保存(キャッシュ)されています。新しい月のデータが公表されても、画面に反映されるまでに時間がかかることがあります。最新の月が含まれているかは、結果の「データ期間」の最終日でご確認ください。
Q. 季節成分を除けなかったと表示されました。 月次・週次では、欠けのないデータでないと、季節成分は除けません。CSVファイルの場合は、「欠けた点の扱い」を「線形補間で埋める」にすると、除けることがあります。データの点数が、季節周期の2倍に足りない場合も、除けません。
Q. 「点数が不足しています」と表示されました。 変化率が、ウィンドウ幅の点数以上、必要です。ウィンドウ幅を小さくするか、データ範囲を広げてください。
Q. 「0以下の値を含むため、前期比(変化率)は使えません」と表示されました。 変化率の種類を「差分」に変更してください。
Q. 「入力された期間に該当するデータはありません」と表示されました。 指定したデータ範囲に、データがありません。範囲を見直してください。
Q. 「計算量が大きすぎます」と表示され、実行できません。 ステップ幅を大きくするか、ウィンドウ幅を小さくするか、データ範囲を絞ってください。
Q. 同じ設定で実行しても、結果が変わることがあります。 同じデータ・同じ設定であれば、同じ結果になります。政府統計のデータが更新・改定された場合は、結果が変わります。
Q. 4つの指標の結論が分かれました。どう読めばよいですか。 指標ごとに、調べている内容が違うため、結論が分かれることがあります。結論が分かれたこと自体が、そのデータの動きの性質を示す手がかりになります。1つにまとめず、指標ごとにお読みください。
出典・関連情報
- 政府統計のデータは、e-Stat(政府統計の総合窓口)と財務省が公表するデータをもとに、当サービスが加工して作成しています。結果は、国の機関等の見解ではありません。結果画面の下部に、出典が表示されます。
- 数理的な背景は、「「時系列ランダム性分析」の機能」をご覧ください。
- ご利用にあたっては、利用規約もあわせてご確認ください。